September 30, 2004
デューン 砂の惑星 (2)、
デューン砂の惑星 (3)、
デューン砂の惑星 (4)
星間国家から成る帝国が銀河系を支配する未来。公爵レト・アトレイデはハルコンネン家の罠と知りつつ皇帝の命により惑星アラキスに赴任する。アラキスは不毛の砂漠の惑星だが、帝国の死命を制する香料・メランジの唯一の産地だった。赴任してまもなく家臣の裏切りによりレトは殺されるが、1人息子ポウルは母と共に砂漠に逃げ延びる。そして砂漠でメランジにより救世主=クイサッツ・ハデラッハとして覚醒。砂漠の民フレーメンを率いて仇敵ハルコンネン家と皇帝に復讐戦を挑む...。
もう古典になりつつあるんじゃないだろうかと思っているSF大作です。単なる復讐の物語というだけでなく、帝国で勢力を持つグループ:皇帝家、公家(ハウス。アトレイデ家やハルコンネン家もここに属します)、ベネ・ゲセリット教会(救世主の誕生を目指して暗躍。やってることはもろセックスカルト教団です)、トライラックス(科学技術に長け、クローン人間なんて朝飯前。やることが一番卑劣だと思う)がそれぞれ自分の利害のために複雑に絡み合うところもしっかり書かれていますし、主人公のクイサッツ・ハデラッハとしての能力もちゃんと物語の一部分となっています(救世主といっても万能ではなく、次の作品「
デューン砂漠の救世主」ではその能力ゆえに辛い決断を強いられることになるわけですが...)。いくつかの選択し得る未来の中から一つを選んだ場合、その結末がどうなるかが全て見えるのですから、予知能力者といってよいでしょう(ある意味将棋や囲碁のプロ棋士に近いかも)。未来が既に決まったものとして示されていないところも面白いです。作品で使われている用語や作品世界の勢力図を頭に入れるだけで一苦労ですが、単純明快な勧善懲悪ものに飽き足らない方にはお勧めです。
*この作品、デューンシリーズとして続いていくわけですが、「デューン砂漠の救世主」の後の「デューン砂丘の子供たち」で(あれ?)となり、「デューン砂漠の神皇帝」で(...もはや人間じゃないじゃん)とかなりめげました。最近になって作者の息子さんがデューンへの道シリーズを出しているようですが、親父の七光りなんか使わず自分のオリジナルで勝負しろと思うのは私だけでしょうか。
*この作品の表紙と挿絵なんですが、初めて読んだときには石森章太郎氏によるイラストでした(当時は「ノ」がついてなかった)。なかなか雰囲気出てると思ってたんですが、今は別の人の絵になっちゃってますね。今の絵が悪いというわけではないですが、ちょっと淋しいです。
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September 29, 2004
タイトルの「ライトスタッフ」とは「正しい資質」を意味します。この映画では、宇宙飛行士としての「正しい資質(と思われるもの)」という意味で使っているようです。
米ソ冷戦時代。宇宙開発の分野でソ連に一歩先を取られた分を取り返すべく、アメリカはマーキュリー計画をぶち上げます。計画推進のために宇宙飛行士候補として選ばれたのはテストパイロットたち。トップクラスの操縦の腕を持ち、常に死と隣り合わせの恐怖に打ち勝って空を飛び続ける彼らにはうってつけの任務と思われました。しかし、国家を挙げてのプロジェクトで世界中の注目を浴びる宇宙飛行士(無事に地球に帰還すればパレードの上にヒーローインタビュー!)といえど、宇宙船に乗り込んでしまえば操縦の腕を全く要求されない、サルと同じというのが実情でした。栄光と屈辱の両方を味わいながらテストパイロットたちは宇宙へと挑むことになります。
一方で、国家の勧誘に背を向けてテストパイロットとして空に挑み続ける男たち。その象徴として、初めて音速の壁を破った男、チャック・イエーガーの姿が描かれます。世間の注目がテストパイロットから宇宙飛行士に移ろっていくのを実感し、かつての同僚たちがもてはやされるのを横目で見ながらひたすら記録に挑む彼の姿が宇宙飛行士たちと対照的に描かれます。ラストでひたすら空を飛び続ける彼の姿は爽快でさえあります。
つい最近になって20万ドル程度で宇宙旅行を提供するビジネス計画が発表されるなど、宇宙飛行への垣根がどんどん低くなっているのが分かります。あと数十年たったら「ライトスタッフ」という言葉が宇宙飛行士に対して使われなくなるかも...などと考えさせられる映画でした。そして、国家の英雄として栄光(そして屈辱)の道を歩むのと、ひたすら自分の道を進み続けるのと自分ならどちらを選ぶのだろうかとも。ちょっと長いですが、宇宙開発に興味のある方にはお勧めです。
*この映画の原作ザ・ライト・スタッフ―七人の宇宙飛行士も出ています。ちょっと読みにくいですが、感傷的な書き方はされてませんのでドキュメント風に読めます。
*同じように宇宙を目指しながら、サルに先を越されてしまった宇宙飛行士たちの数十年後...がスペースカウボーイかもしれません(テイストは全く違いますが)。
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September 28, 2004
戦場では朱槍を振り回す「いくさ人」として、また、茶の湯・和歌を好む風流人として、そして何よりも「天下の傾奇(かぶき)者」として知られた前田慶次郎。戦国時代末期を駆け抜けた男の物語。
「傾奇者」というのは、異風の姿形を好み、異様な振る舞いや突飛な行動を愛する人のことを言うのだそうです。これだけだったらただの目立ちたがりの変人ですが、主人公は茶の湯・和歌の道にも通じ、戦場では朱槍を振り回すいくさ人(これ、戦場では「俺がNo.1!」と誇示することになるわけで、味方に目立つだけでなく敵にも目立つので真っ先に狙われてしまうそうです)。こういう人が普通の生き方が出来るわけがないと思ってしまうのは私だけでしょうか。主人公は豊臣秀吉に対しても傾奇者としてのプライドを貫き(その結果、秀吉からさえも賞賛を受けます)、朝鮮に渡ったときも渡航の理由を聞かれて「女と喧嘩」と答えています(送り出した石田三成も頭を抱えたでしょうが、迎えた朝鮮側もさぞ困ったことでしょう。読んでいて笑ってしまいました)。主人公が恋人と自分の意地の間で悩むくだり、「虎や熊の悩みはさぞ深いことだろう...考えてもみろ、栗鼠や兎が悩むかよ」や、愛馬・松風との出会いのシーンもなかなか印象に残ります。普通の人が主人公のような生き方をしたら命がいくつあっても足りないでしょうが、それでも自分の思いを貫いて生き抜いてみたいと思わせる本です。
*この作品の登場人物たちが同じ作者の「
影武者徳川家康」その他の作品にも出てきます。
*この作品を原作にした原 哲夫 作のコミック「花の慶次」も出ています。こちらの作品も原作の雰囲気をうまく出してます。原 哲夫氏は黒くて巨大な馬が好きなんでしょうか(笑)?
花の慶次 1 完全版 (1)、
花の慶次 2 完全版 (2)
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September 27, 2004
人間だけに感染する、未知の伝染病が蔓延した近未来。人類は地下深くに息を潜めて生きていた。囚人ジェームズ・コール(演じるのはブルース・ウィリス)は恩赦と引き換えに、「12モンキーズ」と伝染病との関わりを調べるため過去へと送り込まれる。しかし過去に着いた早々に精神病院へと送られ...。
過去と未来が交錯する、一種独特な感じのするSFです。途中から主人公が嘘をついているわけでもなければ精神病を患っているわけでもないと気づき、主人公に協力する女医、キレまくった精神病患者(演じるのはブラッド・ピット。しかもこのヒトがキーパーソンだったりします)。彼らを巻き込みながら主人公の探索は続きます。ブルース・ウィリス、知能でというよりは肉体で(笑)真実に迫る主人公を熱演してます。そして最後に主人公を悩ませ続けていた夢が実は何だったのかを主人公は知るのです。全体に流れる曲とあいまって、観終わって何ともいえない哀しみを感じる映画です。
*この映画の精神病患者とか、
スナッチに出てくるボクサーとか、ちょっと変わった役だとブラッド・ピットは実に楽しそうに演じてますね。
ジョー・ブラックをよろしくの正統派美男子も良いと思うのですが。
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September 26, 2004
沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻之三
沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻之四
安禄山の乱から数十年後の長安の都。若き修行僧・空海は密教を求めて友人の橘逸勢らと共に遣唐使として長安に入る。空海と橘逸勢はふとしたきっかけから時の帝をめぐって頻発する怪異に関わることになる。やがて一連の怪異が玄宗・楊貴妃にかかわりのあることが明らかになり...。
玄宗に端を発する愛憎の絡み合い。過ぎ去った時への惜別。死んだ者が二度と蘇らないように、過ぎ去った時もまた二度と戻ってきません。この本に出てくるのは過去の重みに打ちひしがれながら生きる者たちです。忘れてしまうにはあまりにも濃密過ぎ、重すぎる過去でした。
ところで、この作品の主人公である(主人公というより狂言回しと言ったほうが良いかも)空海と橘逸勢との関係が同じ作者の「陰陽師」シリーズの主人公と友人との関係によく似てますが、空海のほうが若い分だけ野心に満ち溢れている感じですね。全4巻でボリュームがありますが、読みやすいので一気に読めると思います。
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September 25, 2004
古代ギリシア。テッサリー(テッサリア)王の遺児ジェイソンは王位を取り戻すためギリシアの勇士を集め、持ち主に繁栄をもたらすという黄金の羊の毛皮を求めてコルキスへと船出する...。
レイ・ハリーハウゼン御大の最高傑作(と、自分で勝手に思っている)「アルゴ探検隊の大冒険」です。ギリシャ神話に題材をとっているところは後年の「タイタンの戦い」と同じですが、この映画でも魅惑的なクリーチャーが目白押しです。「シンドバッド黄金の航海」に出てくるホムンクルスを連想させるハーピイ、7つの頭のハイドラ、青銅の巨人テイロス(弱点をジェイソンに攻撃されて苦しむ姿が妙にリアルです)、そしてなんといっても見せ場は7体のガイコツ剣士vs.3人の勇士の戦闘シーンでしょう。ガイコツ剣士たちが剣を構えていっせいにかかってくるところは必見です。
*最近になってこの映画のリメイク版「アルゴノーツ」も出ました。ストーリーはオリジナルとおおむね同じですが、黄金の毛皮を手に入れてからのエピソードも出てきます。リメイク版の方がジェイソンはハンサムです。リメイク版では人間ドラマを重視しているようですが、CGによる見せ場がもう少し多いほうが面白かったと思います。
*レイ・ハリーハウゼンの作品を集めた「レイ・ハリーハウゼン DVDライブラリー Limited Box」も出ています。こちらはマニアの方にお勧めです(ただし、「タイタンの戦い」は収録されていないようです)。
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September 24, 2004
鎌倉時代初期、九郎坊と名乗る男は追っ手を逃れ奥州の山中に身をひそめるうち、いつしか黒蜜という女と愛し合うようになる。鎌倉方の追っ手が迫ってきたとき黒蜜は男に自分が不死の存在であることを明かし、共に生きるように誘うが思いもかけぬ裏切りが二人を襲った...。そして核戦争後の近未来、男はクロウと名乗り、記憶を失ったまま黒蜜の面影を探し求めていた。
謡曲「黒塚」をモチーフとした小説です。黒蜜は鎌倉方の追っ手が迫ってきたときに自分が人間の生き血を飲んで生きる不死の存在であることを明かし、九郎坊に自分の血を与えて共に生きようとします。ここまでだとインタビュー・ウイズ・ヴァンパイアと似たお話になりますが、ここで思いがけない裏切りにあい、男は首から上のみが不死の存在となってしまいます。首から下は普通の人間と同じように年を取っていくため、共に生きるために黒蜜は他の人間の体を奪って男に与えるのですが、その代償に男はそれまでの記憶を失ってしまうのです。男の記憶を取り戻すために黒蜜はある手段を考えるのですが、男を愛する一心でとはいえこの手段もむごいものでした(黒蜜から血を与えられ、こちらは完全な不死の身となった男がもう1人登場するのですが...こりゃあんまりです)。結果として男はようやく自分の記憶を取り戻すのですが、二人の行く手にはこれまでも、そしてこれからも人間の屍が築かれていくのを予感させてこの物語は終わります。人間の生き血をすすり、手に手を取って地獄へと堕ちていく二人の男女。この小説は凄絶な恋愛小説ともいえると思います。
*同じく謡曲「黒塚」をモチーフにした手塚治虫の「安達ヶ原」もお勧めです。こちらの方は哀しくもやるせない...
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September 23, 2004
帝政期のローマ。将軍タイタス(演じるのは名優アンソニー・ホプキンス!)はゴートの女王タマラを捕虜としてローマに連行し、タマラの息子を生け贄として神殿に捧げる。復讐に燃えるタマラはローマ皇帝を誘惑して妃となり、生き残った息子たちに命じてタイタスの娘をレイプし、両手と舌を切断させてしまう...血で血を洗う復讐のドラマ。
のっけからナチスの軍服に身を固めたローマ軍兵士が現れて驚かされますが(タイタスは確かサイドカーに乗って登場してたと思います)、物語が進むにつれて古代ローマ軍兵士のきらびやかな軍装よりもナチスの軍服の方が似つかわしいという気になってきます。「ベン・ハー」の場合は復讐が成った後の空しさを主人公が感じたところから新しい展開が生まれるのですが、この映画ではそんなことはなくてひたすら「目には目を、歯には歯を」なのです。タイタスの娘はレイプされた上に両手と舌まで切り落とされてしまうのですが、対するタイタスの復讐もすさまじい。古代の中国では敵国の王子をかまゆでにしてスープを作り、そのスープを父親(=敵国の王)に飲ませたそうですが、東洋も西洋も発想は似ているようです。そして復讐に次ぐ復讐の後に残るものは、死の静寂。
*この映画、ビジュアル的には美しいのが凄惨さをより際立たせていると思います。特に印象に残ったのは、タイタスの娘が両手を切り落とされた後で腕に枝を刺された姿で(!)湖にたたずむシーン...考えてみたらぞっとするシチュエーションなのですが、絵的には美しいのです。
*原作も日本語に翻訳されて出ています。が、...シェークスピアの原作とは思えないほど陰惨な物語ですね。初期の作品だそうですが。
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September 22, 2004
ジュラシック・パーク (下)ハヤカワ文庫
ジュラ紀の恐竜を現代に!誰もが一度は描く夢。その夢が最新のバイオテクノロジーによって実現した。恐竜たちがのし歩くテーマパーク「ジュラシック・パーク」に視察のため訪れた顧問の面々。しかし彼らを待ち受けるのは恐怖のサバイバルゲームだった...
琥珀の中によく古代の虫が封じられていることがありますが、その虫が恐竜の血を吸っていたというのは十分考えられる話です。恐竜の血からDNAを取り出し、現代に恐竜を蘇らせる...アイデアだけでワクワクしてしまいます。マルカム先生のご高説はごもっともだけどジュラシックパークで起きたのはカオスじゃなくて人災だろとか突っ込みどころもあるのですが、あの太った兄ちゃんがなんであんなことをしたのかとか(全ての発端は彼だったのですから)、恐竜を蘇らせた側の科学者たちのストーリーもきっちり書き込まれているところが良いです(このあたりは映画ではばっさり削られてます)。映画はホントに有名ですが、この原作も面白いですよ。
*言わずもがなの映画「ジュラシック・パーク」。スピルバーグのT-レックスへの愛がひしひしと伝わってくる作品です(笑)。ただ、この映画で使われたCGがダイナメーション(レイ・ハリーハウゼンから連綿と続いてきました)の息の根を止めてしまったそうなので、個人的には複雑です。
*恐竜大好きの方には星野之宣によるSFコミック「ブルー・ワールド」もお勧めです。恐竜好きにはこたえられない設定やシーンが満載です。
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September 21, 2004
身重の妻を失い、自暴自棄となっていたルイ(演じるのはブラッド・ピット)の前に現れたヴァンパイア・レスタト(演じるのはトム・クルーズ)。ルイはレスタトの誘いを受け入れ、ヴァンパイアとしてその後の長い年月を生きることになる。ジャーナリストのインタビューに答えてルイが語る長い旅の遍歴。
人生でもっとも自暴自棄だった時期にふとレスタトの誘いを受け入れてしまい、ヴァンパイアとなってしまった自分に折り合いがつけられず苦しみ続けるルイ。それとは対照的にヴァンパイアとしての自分を肯定し、パワフルに生きるレスタト。この二人の生き方が対照的です。この二人の間に自分の意思とは関わりなくヴァンパイアにされ、長い年月を少女の姿のまま生きることになったクラウディア、レスタトよりもはるかに長い年月を生き続け、ルイに新しい光を見出したアーマンドなどが絡んで愛憎のドラマが織り成されていきます。レスタトを演じたトム・クルーズ、名演です(それまでの出演作から考えて、彼にヴァンパイアを演じられるとは思っていなかったんですが見事に裏切られました)。それに比べると役柄もあるんでしょうが、ブラッド・ピットがちょっと弱かったかな。
*この映画の原作「夜明けのヴァンパイア」もお勧めです。
*吸血鬼となって長い年月を少年の姿のまま生きねばならなくなった少年を描いた萩尾望都によるコミック「ポーの一族」もお勧めです。ただし絵柄がまるっきり少女漫画なので、その手の絵が苦手な人はご注意を。
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September 20, 2004
終戦のローレライ 下
太平洋戦争末期、敗色濃厚な日本で極秘任務のため船籍のない潜水艦伊507に集められた男たち。その任務とは、ドイツのUボートが日本海で遺棄してしまった秘密兵器「ローレライ」を回収することだった。やがて明らかになるローレライの意外な秘密。いくつかの戦いを経て、伊507の乗組員たちは自分のなすべきことのために米軍艦隊の待ち受ける海域へと向かう...
大作「亡国のイージス」を送り出した福井晴敏による第二弾です。主人公たちが潜水艦に乗り込むまでは少々読みづらい感じがあったんですが、舞台を海に移してからはがぜん物語が生き生きしてきます。乗組員たちのそれぞれが背負う過去、戦局をもひっくり返す力がありながら致命的な欠陥を抱えるローレライ、そして物量で全てを圧倒しつつあるアメリカ(これは今も変わってませんね)。クライマックスで全てが一点に収束し、主人公たちは伊507が生み出したひとつぶの椰子の実として大海原へ出て行きます。声高に反戦を訴えているわけではありませんが、平和への祈りが伝わってくるような本です。
*おいおいこれってサイコミュのことじゃないのとか、圧倒的な敵軍にただ1隻で戦いを挑む...ってさらば宇宙戦艦ヤマトそのままじゃんかとか(潜水艦に砲身はついてるし)、この小説はアニメの影響もかなり強く受けてるんじゃないかと思います。
*この本を読み終わると、なんとなく「椰子の実」を口ずさんでみたくなります。
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September 19, 2004
近未来のニューヨーク。人口の爆発的増加と環境汚染により、人類は深刻な食糧難に陥っていた。そこにソイレント社から発表された夢の合成食品「ソイレント・グリーン」。この食品によって全てが解決するかに見えたが、そこには恐ろしい秘密が隠されていた...
観ていてかったるくなってくるストーリー展開、派手なカーチェイスも爆発もない静かなアクションシーン、登場人物たちの暑苦しいファッション(これは余計か)。これだけ挙げると金返せレベルの映画となってしまいますが、この映画は一味違うのです。老人が死にゆくシーンでの静かな音楽も印象的ですが、この映画の最大の観どころ(聞きどころ)はなんといってもラストの主人公のせりふです。「ソイレントグリーンは○○だ!」(英語では「ソイレント・グリーン・イズ・○○!」)ぜひこのせりふを聞いて、最後の衝撃を味わってください。
*同じ衝撃的なラストというと「猿の惑星」が真っ先に浮かびます(映画としての出来は猿の惑星の方がはるかに上です。念のため)。
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September 18, 2004
米ソ冷戦時代。英国諜報部のチャーリー・マフィンは新しく来た上司によって閑職に追いやられ、オフィスにあった自分の個室も取り上げられていた。おりしもソ連の大物が英国に亡命を希望するという話が舞い込み、経験者のチャーリーが急遽抜擢されるが...
英国情報部というとすぐ思いつくのはジェームズ・ボンドですが、あんな華やか(そして漫画チック)な世界とは全く無縁なのがこの小説です。主人公(これがまた能力とは裏腹に外見は冴えない中年男なのです)は新しい上司によって左遷され、リストラ寸前。交通費もケチられ、タクシーを使えずオフィスまで歩く羽目になりますし、旧ソ連の大物とコンタクトするときも危うく捨て駒にされかけます。主人公は生き延びるために上司の秘書と関係を持ち、米英ソを手玉に取りながら任務を遂行していくわけですが、身につまされながら共感を覚えるサラリーマンは多いのではないでしょうか。
*この本の続編再び消されかけた男もお勧めです。
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September 17, 2004
北九州の炭鉱で起きた殺人事件。容疑者も特定され、後は逮捕を待つだけのはずだった。その事件の裏に潜むものには誰も気づかずに...捜査が難航する中、地殻変動によって古代の翼竜が復活!福岡は完膚なきまでに破壊されていく。ラドンよ、空を駆けろ!
あの「
ゴジラ」から2年後、ゴジラのあまりの暗さに東宝が方向転換を決めたのかもしれませんが、青空の下、何ともスカッとした映画です。前半部分はサスペンスタッチでどきどきしながら観てました。自宅の庭先にあんなのが出てきたら(トンボのヤゴがモデルのようですが)、自分だったら飛び上がって走って逃げるかも。メガヌロンが人間に追われて山を登るところの絵なんて、実にシュールです。
そして後半。画面は一転してラドンによって完膚なきまでに破壊される福岡を描きます。ゴジラには個人的に「地獄の劫火の中を歩む怪獣」ってイメージがあるのですが、ラドンのイメージは「スカッとさわやか、爽快に破壊!」ですね。ソニックブームによって破壊される福岡の有様は一種爽快です(福岡の方、申し訳ない)。この爽快さは、おそらくラドンが福岡を破壊しようとする意思を実は持っていないからだと思っています。ゴジラの場合には東京を破壊しつくしてやるという明確な意思があったわけですが、ラドンの場合には餌を求めて飛び回っているうちになんか下のほうで埃が浮いていると(笑)。そのうち変な蚊トンボみたいなのがまつわりついてくるし、ラドンとしては大迷惑だったに違いありません(人間も迷惑だったわけですが)。このあたり、餌を求めて里に下りてくるクマとあまり変わらないような気がします。破壊の快感がラストの物悲しさとあいまって、怪獣映画の名作だと思います。
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September 16, 2004
月面基地建設中に大事故発生!原因は、与えられた命令を果たすために制御コンピュータが最短かつもっとも危険な手段を採用したためだった。人類はコンピュータ(人工知能)をどう取り扱っていくべきなのか?答えを出すため、人工知能の権威ダイアー博士はある実験を提案する。その実験は当初の予想を超え、二つの異なる知性の出会いを生み出し...
「星を継ぐもの」「ガニメデの優しい巨人」「巨人たちの星」三部作を生み出したホーガンの近未来SFです。ラストがちょっと楽観的過ぎる気もしますが、起源がまったく異なる二つの知性がお互いをどうやって認識するのか、どうコミュニケートを取るのかなど、読んでいて面白い部分がたくさんあります。
*ところで、「2001年宇宙の旅」のHALもユニットを抜き取られる(=殺される)ときに恐怖を示していましたが、人工知能もやはり死に対して恐怖を感じるものなのでしょうか?この作品も、「2001年宇宙の旅」も、死に対して恐怖を感じることを知性の一つの条件としているような気がします。
*この本を原作とした星野之宣によるコミック「未来の二つの顔」もお勧めです。
*そういえば後で思い出しましたが、伝説巨神イデオンもまた二つの起源を異にする知性の出会いを描いたアニメと言えなくもないですね(えらく不幸な終わり方でしたが)。
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息子が心臓病で移植手術を受けなければ余命いくばくもないことを知らされたジョン(通称「ジョンQ」)。彼は息子に手術を受けさせるために家財を売り払って金を工面し、保険会社とも交渉するが、それでも必要な額には足りなかった。資金不足を理由に息子の手術を拒絶する病院。ジョンはある決断をした...
まず、ジョン一家の窮状が描かれます。車を差し押さえられ、会社からは勤務時間を減らされ(=給料ダウン)、職を探そうにも「資格がありすぎ」という理由で断られ、頼みの綱になるはずだった保険もいつの間にか本当に必要なときに役に立たない条件に変更され...貧しい者には徹底的に厳しいのがアメリカのようです(そういえば、「ボウリング・フォー・コロンバイン」で取り上げられていた、学校で銃を乱射した小学生の母親も最低賃金で働いていましたが、それでも家賃が払えず親戚の家に身を寄せていたのでした)。映画ではジョンの年収が約200万円。これで手術のために年収の4倍近い費用を一度に工面できるか...自分の年収の4倍の金をすぐ準備できる人は少ないのではないでしょうか。
しかし、アメリカは厳しいなんて他人事のようには言ってられないのです。今の日本がアメリカの進んだ道を同じように進もうとしている限り、日本でも同じことが起きるのは避けられないでしょう(現にリストラ、中高年に厳しい再就職...ここまで同じになってます)。この映画は希望を感じさせて終わるのですが、映画を観終わったこちらは逆に背筋に冷え冷えとしたものを感じたのでした。
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September 15, 2004
古代のソロモン王は指環の力を借りて動物たちと話をしていた。では、現代の動物学者たちは?鳥たちに向かって間違えて別の種類の鳥の言葉で話しかけてしまい、あわてて言い直した動物学者の話など、動物行動学者ローレンツが動物たちの生態を愛情とユーモアたっぷりに描いた動物行動学の入門書。
この本には野生の動物だけでなく、人間に飼われている動物たちの話もたくさん出てきます。ペットとして飼う動物は何が良いかから始まって、ローレンツが飼っていた犬の話も興味深いです(ローレンツが内心面白く思っていない客との話が始まると、いつのまにか客の背後に忍び寄ってお尻に軽く噛み付くくだりには笑ってしまいました)。そして、有名な「刷り込み」の例として、ガンの雛、マルティナのエピソードも出てきます。ローレンツはうっかり生まれたばかりのマルティナの呼びかけに答えてしまったばっかりにマルティナの里親をつとめる羽目になるのですが、ユーモアたっぷりにマルティナとの絆が描かれていくのが楽しいです。動物行動学の入門書というだけでなく、動物好きにはお勧めできる本です。
*WATARIDORI...LE PEUPLE MIGRATEURでも「刷り込み」を撮影に使っています。鳥の雛をかえして人間に慣れさせた上で、飛んでいる鳥の間近で映像を撮影したそうです。
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September 14, 2004
40年前に宇宙飛行士候補として訓練を受けながら、NASAが土壇場で方針を変えたために宇宙への夢を絶たれた4人の男たち。彼らは夢破れた後それぞれの道を歩んでいたが、今となっては彼らしか構造を知らないロシアの衛星が故障!4人は自分たちが宇宙へ行くことを条件に、NASAに協力することを承諾するが...
4人のカウボーイが若かりし頃に情熱を傾けた宇宙に再び挑戦!と書くと生真面目一本槍な映画に思われそうですが、そんなことはありません。訓練のシーンもユーモアたっぷりで、特に遠心分離機に乗って訓練を受けているときでも意地を張り合う爺さんたちには笑ってしまいました(遠心力でシワがのびるところも)。ラスト、決してハッピーエンドではないんですが、悲しい中にも清々しくエンディングを迎えます。爺さんたちに乾杯!
*ところで、NASAの管制官ジーン・クランツ(アポロ13でエド・ハリスが演じてました)が、この映画に出てくる管制官のモデルなんでしょうか?
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September 13, 2004
1909年にカナダで発見された不思議な小動物の化石群。研究が進むにつれて、その生き物たちの奇妙奇天烈摩訶不思議な姿が明らかになっていき...
最初は節足動物と思われていた小動物たちが、実はとんでもない姿をしていたと分かったときの驚き。いったいどうやって栄養を取っていたのか、どう動いていたのかも分からない小動物たち。なかにはアノマロカリスのように大人の科学マガジン Vol.5の飼育セットについていたプランクトンにぱっと見が似ているような奴もいるのですが、どっちが前でどっちが後ろなのかもはっきりしないようなものまでいます。5億年前というとちょうど「カンブリア紀の大爆発」と呼ばれる、生物の種類が爆発的に増えた時期でもあります。フューチャー・イズ・ワイルドが遠い未来に現れるかもしれない動物、鼻行類が今の哺乳類とはまったく異なった進化を遂げた動物をデザインしたものだとすれば、この本は過去に自然がデザインした奇天烈動物たちの画集といえるでしょう。自然のデザイナーとしての才能も人間に負けていませんね。
*アノマロカリスなどのバージェス頁岩の動物たちのCG(動画)が見られるサイトもあります。なかなか面白いです(動画の再生にはQuickTimeが必要です)。
*もう一つ驚きなのは、この奇妙奇天烈動物群の中に我々の祖先もちゃんと存在していたということです。
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September 12, 2004
3人の宇宙飛行士を乗せた宇宙船がとある惑星に不時着。その星は、類人猿が支配する星だった!3人のうち1人は殺され、もう1人はロボトミー手術の実験台にされてしまう。最後に残ったテイラーはついにチンパンジーの科学者とのコミュニケーションに成功し、彼らの協力を得て脱出を図るが...
人間と猿の立場がそっくりそのまま逆転しているところも衝撃的ですが、この映画、一にも二にもラストシーンに全てがかかってます。最初に観たとき日本人の私でさえショックを受けたのですから、彼ら(この映画が作られた国の人たち)がどれほどのショックを受けたかは想像もつかないくらいです。というわけで、このDVDのジャケットを作った奴はクビ!
*本作から「最後の猿の惑星」までシリーズ5作と、映像特典を収録したコレクターズボックス「猿の惑星 BOX SET」
も出ています。こちらはお金と時間の余裕のある人向け...かな。
*原作「猿の惑星」も出ています。こちらもなかなか面白いですが、ラストの衝撃度は映画のほうがはるかに上です。
 | 猿の惑星 ピエール ブール, Pierre Boulle, 高橋 啓
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*人間と動物との位置関係がひっくり返ってしまったと言う設定で思い出すのが藤子・F・不二雄氏によるSF短編コミック「ミノタウロスの皿」です。今思うと設定が少し猿の惑星に似ているところもありますが、こちらも実にブラックです。
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September 11, 2004
第二次世界大戦中に日本軍捕虜収容所から脱走した一人の兵士がハイアイアイ諸島に漂着する。そこには鼻で歩く哺乳類・鼻行類(ハナアルキ)が生息していた。かつてハイアイアイ諸島に生息・適応していた驚異の哺乳類の生態を紹介した本。
今は核実験により失われたハイアイアイ諸島に住んでいた(まるでインファント島ですね(笑)。巨大な蛾の守護神はさすがに出てきませんが)、奇妙奇天烈な哺乳類たちの記録です。まず鼻で歩く(つまり、いつも逆立ち状態)という姿に対して言葉を失ってしまいますが、鼻の筋肉が発達して飛び跳ねるように移動するもの、鼻を花そっくりに擬態して寄ってきた虫を捕食するもの、肉食性のもの...移動に手足の代わりに鼻を使うというだけで、他の大陸の哺乳類と同様に適応放散を遂げているところには驚いてしまいます。フューチャー・イズ・ワイルドで遠い未来に地上に現れる(かも知れない)動物たちの姿を楽しめた方にはお勧めの本です。
*この本はあとがきまで全て読んだ方が良いと思います。頭の硬い方、冗談を聞かされると怒り出す方にはこの本はお勧めしません。
*この鼻行類を取り上げた唯一のコミックではないかと思うのが柴田昌弘氏の短編コミック「ミッシングアイランズ」です。鼻行類がまさかコミックになっているとは思わなかったので驚きでした。一部トホホな設定もありますが、鼻行類たちの姿もちゃんと楽しめます。
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