April 24, 2005

宇宙からの帰還

宇宙からの帰還
立花 隆

中央公論新社 1985-07
売り上げランキング : 24,288

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この本は、NASAの宇宙飛行士たちに宇宙から帰還した後で精神的にどのような変化がおきたのかを著者がインタビューしてまとめた本です。インタビューされる側の宇宙飛行士たちはNASAの宇宙開発計画の初期にかかわった人たちばかりなので軍人(テストパイロット出身者など)が多く、また、ほとんど全てが技術系の人々でした(なかには「詩人の魂を持つ」と評された人もいたようですが、例外中の例外だったようです)。宇宙から帰還した後で宇宙飛行士たちはNASAからデブリーフィングを受けますが、それも技術的な内容だけで精神的に何が起きたかについては調査はされていなかったようです。この本では宇宙飛行士たちが遂行したミッションと地球に帰還してからのかれらの進路についても簡単に触れていますが、精神的にどのようなインパクトを受けたのかに主眼が置かれています。面白かったのは、大抵の宇宙飛行士は何かしらの影響を受けたと答えているのに(ただし、影響を受けたからといって全ての宇宙飛行士が宗教に走ったわけではないと言うのも興味深いところです)、全く影響を受けなかったと答えている宇宙飛行士もいたと言う点です。稀有の体験をしたからといってその体験が影響を与えるかどうかは個々人の個性によるのでしょう。日本の宇宙飛行士たちに同じ事を聞いてみたい気がします。

*この作品でインタビューを受けた宇宙飛行士は技術系ですが、同じ著者が後に宇宙に飛んだジャーナリスト(当時)、秋山氏にデブリーフィングを行った結果をまとめたのが「宇宙よ」です。軍人とジャーナリストで感じ方がどう違うかを読み比べてみるのも面白いかも。

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April 10, 2005

流星―お市の方

流星―お市の方 (上)
永井 路子

文芸春秋 2005-03
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流星―お市の方 (下)
永井 路子

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戦国時代。織田信長の妹・お市は兄の戦略に従い浅井長政のもとに嫁ぐ。しかし織田家と浅井家が対立するようになり...。

戦国時代の政略結婚の代表みたいに言われているのではないかと思う織田信長の妹・お市の生涯を描いた作品です(この人の肖像画と言われている絵も残っていますが、これを見ると美人ですね~)。政略結婚というと自分の意思に反して結婚したくもない相手のところに泣く泣く嫁いでいく...というイメージがあるのですが、この作品を読むとむしろ家の一員として使命感を持って相手の家に嫁いでいったという面もあったのではないかと思えてきます。ただの結婚ではなく、外交官として相手の家に乗り込んでいくという感じでしょうか。だから実家と婚家との間の橋渡し役にもなるし、もし実家と婚家が決裂した場合でもいきなり殺されたりはせずに実家に戻されたり、そのまま婚家にとどまったりしています。実家と婚家を国家に、女性を外交官に置き換えると現代でも通じるところがあると思います。主人公の場合にはたまたま兄が織田信長だったこともあって短くも鮮烈な生涯を駆け抜けるのですが、この作品に登場するほかの女性たち(例えば織田信長の妻など)にしても与えられた状況なりに自分の意思で生きていったという気がしてなりません。

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April 08, 2005

宇宙の孤児

宇宙の孤児
ロバート A.ハインライン 矢野 徹

早川書房 1978-02
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人々がいくつかの階級に分かれて生活し、「船長」が階級の頂点で全てを支配する世界。「科学者」候補となったヒュウ・ホイランドは「ミューティ」に捕らえられ、奴隷にされるが...。

奴隷にされた主人公ですが、そこで「ミューティ」(突然変異)のボスから意外な真実を知らされます。それは彼にとっては想像もつかない、今まで自分の信じてきたものが全てひっくり返ってしまう事実でした。ある程度まで成長してから、生まれて初めて星を見せられたら人は同じ反応をするのかもしれません(生まれてからずっと雪を見たことのない人に雪が降るシーンを見せたら大爆笑したって言うエピソードを思い出しました)。この作品では生まれて初めて星を見るだけでは済まず、自分が信じていた世界が実は巨大な宇宙船の内部で、過去の知識を失ったまま機械に導かれて星を旅していた事実を知る羽目になります。主人公は自分が知った驚愕の事実を「船長」以下支配階級に知らせるべく元いた社会に戻ります。それが長く続いた社会をゆるがし、そして...。後は読んでのお楽しみですが、SF風味で少年の成長を描いた作品と見ると楽しめると思います。

*「科学者」候補となった主人公が「現代基礎物理」(この作品では聖典の一つとなっています)の内容について議論するくだりがあるんですが、引力の法則のことを「愛情を説明するのに使った詩的な言い回しだ」と言っているあたりには笑いました。

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March 28, 2005

A.I

A.I.
ハーレイ・ジョエル・オスメント スティーブン・スピルバーグ ジュード・ロウ

ワーナー・ホーム・ビデオ 2003-12-06
売り上げランキング : 12,569

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子供の身代わりとしてある家に迎え入れられた人工知能を持つ少年型ロボット・デビッド。しかし彼はやがて家を追われてしまい...。

子供の身代わりとして迎え入れられたデビッド。しかし迎える側の夫妻にとって彼は身代わりでしかありませんでした。やがて彼は家を追われてしまいます(このあたり、鉄腕アトムの導入部と似てますな。天馬博士がアトムをサーカスに売っ払う理由もアレですが、この作品でデビッドが追い出される理由も相当です)。ぬいぐるみのクマ(これもロボット)を友として、途中で想像するだけでもぞっとするロボット狩りを何とか切り抜けながら(主人公が少年型のロボットでなかったら助けてはもらえなかったでしょうね...)、願いをかなえてくれると言う女神の元へと主人公は旅を続けます。(えらく姿は違う神様ですが)とりあえず主人公の願いは時空を超えてかなえられることになるわけですが...。あの結末だったら主人公にとって時が止まったままでいた方がよほど幸福だったのではないかと考え込んでしまいました。人間としての感情を与えられなかった方が主人公はよほど幸福になれたのではないか、と(人間としての感情=ハッピーなら人間はとっくにハッピーになってるはずだし)。

*同じようなテーマを扱ったアニメに「人造人間キカイダー THE ANIMATION」があります(原作は石ノ森章太郎氏のコミック「人造人間キカイダー」)。人間の心を持ったピノキオ(=キカイダー)は幸せになれるのか?と言うテーマで、とりあえず人類にとってはハッピーエンドなんですが主人公にとっては最悪のバッドエンド。観終わって欝になった覚えがあります。


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March 25, 2005

蒼き狼

蒼き狼
井上 靖

新潮社 1954-06
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モンゴルの一氏族の族長の息子として生まれたテムジン(後のチンギス・ハーン)。彼は自分を蒼き狼の子孫たらしめるべく征服者への道をひた走る...。

モンゴルの一氏族から勢力を広げ、ユーラシア大陸を席巻したチンギス・ハーン。彼の征服欲はどこから来たのか?に焦点を当てた作品です。実は母親が他の氏族にさらわれた後で生まれたため、主人公自身が自分が本当にモンゴル族の血を引いているのかを疑い(モンゴル族の伝承では祖先が蒼き狼となっているそうです)、モンゴル族の血を証明するために(=自分が蒼き狼の子孫であると自分に納得させるために)飽くなき征服を繰り返したのだろうというのが著者の意見のようです。ただ、それだけならモンゴル全土を統一したあたりで十分満足できるような気もします。世界を席巻するまでの歴史を追うだけでなく、主人公をめぐる人間模様を読んでいるだけでも面白い作品です。

*自分に流れる蒼き狼の血を証明するために征服を続ける主人公ですが、皮肉にも彼の妻までもが他の氏族にさらわれ、救出後に長男を産むことになります。主人公は長男にジュチ(「客人」という意味だそうです。意味深ですね)と名づけ、長男にも自分と同じように自ら蒼き狼の血を証明するよう強いることになります。長男が病気で死ぬまでの間に親子の間に流れるなんとも複雑な感情...。

*多分この作品あたりからヒントを得たのではないかと思うのがゲーム「蒼き狼と白き雌鹿」です。このゲーム、征服した国の姫君や献上された美女を相手に子作りに励むというコマンドもあるのですが、そればっかりやってる奴もいたような...(笑)。
コーエー定番シリーズ チンギスハーン 蒼き狼と白き牡鹿 IV

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March 19, 2005

陰陽師



人ならぬものが跳梁・跋扈する平安時代。笛の名手・源博雅と友人の陰陽師・安倍晴明の元には様々な怪異譚が持ち込まれて...。

現代よりもずっと闇が濃く、人と人ならぬ者たちが当たり前のように同居していた時代。そんな平安時代にあって吉凶を占ったり人ならぬものたちに対することの出来る陰陽師は多分今の科学者や宗教家よりもはるかに頼もしく、またはるかに恐ろしい存在だったのでしょう。その陰陽師の中でもとりわけ有名なのが安倍晴明でした(伝承では狐を母親とし、陰陽師として修行もしないのに幼い頃から鬼の姿が見えたそうです)。その安倍晴明のもとに持ち込まれる怪異。源博雅は安倍晴明と友人であるために怪異に巻き込まれたり、時には自分から不思議な話を持ち込んだりもしています。この「陰陽師」、シリーズになっていていろいろなエピソードが出てくるのですが、印象に残っているのは小野小町のエピソードと源博雅が恋した女性のエピソードです。どれほど願っても人の心は変えられない、それが分かっていてもどうすることも出来ずに人は鬼になるのか...

*怪異譚そのものもそうですが、各エピソードの冒頭で描かれる安倍晴明と源博雅ののんびりとした会話も面白いです。

*時々蘆屋道満というキャラが出てくるんですが、この人が安倍晴明の同業と言うかライバルと言うか、時には術を競い、時には(結果的に)安倍晴明と共謀するような形で描かれていてかなり面白いですね。決して完全な敵として描かれているわけではなく、むしろ晴明が相手を暖かく見ている感じがして楽しいです。

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February 20, 2005

幻想皇帝―アレクサンドロス戦記



戦国時代。織田信長の居城・安土城に招かれた宣教師ルイス・フロイスは信長に問われるままに古代のアレクサンドロス大王の生涯を語り始める。語り進めていくうちにフロイスはアレクサンドロス大王と信長との奇妙な相似に気付き始め...。

物語はフロイスが信長に呼び出されるたびにアレクサンドロスの生涯を語るという形で進んでいきます。必ずしもしっくり行かなかった親子関係(信長の場合には親から嫌われていたようですが)。国を継いだ後、瞬く間に世界を席巻した征服王としての手腕。新しい武器を積極的に取り入れる先進性。自分を神とみなし、周囲にも自分を神とあがめるよう命じる精神。そして、...築き上げた帝国が自身の死によってあっけなく崩壊してしまうところまでアレクサンドロスと信長は似ていました。そしてフロイスだけが気づいたもう一つの点でも両者はそっくりだったのです。物語も信長が本能寺の変で斃れ、全てが空しくなったところで幕を閉じますが、二人のどちらもが歴史がつかの間夢見た幻想の存在であったのかもしれません。

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February 18, 2005

イギリスはおいしい

イギリスはおいしい
林 望

文芸春秋 1995-09
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この作品は、著者がイギリスに留学したときの体験をもとに書かれた、主にイギリスの食事についての楽しいエッセイです。

イギリス料理というとまずいものというイメージがあるらしく(私は知らなかったんですが、ジョークで「最低の生活とは...日本の家に住み、イギリス人のコックを雇うことである」なんてのもあるらしいです)、この作品でもそりゃないだろと言うのがいくつか出てきます。例えばビクトリア女王の時代から読み継がれている料理の本があるらしいのですが、とにかく塩をふって煮る煮る煮る(素材はともかく、料理法にかなり問題あり)。野菜でも何でもこれでもかと言うほどに煮るそうです。こんなに煮てしまったら栄養はみんなどっかに飛んでいってしまいそうなんですが、それでも煮ると。この本を読んでいるとイギリスのホテルに行って食事をするのは避けようかと言う気になってきます。もっとも全てがまずくてやってられないと言うわけではなく、例えば一口サイズのちょっと酸味のきいたりんごやフィッシュアンドチップス(魚の白身のフライとポテトフライですが)なんて(おしゃれとはいえないけど)結構おいしそうですし、アフタヌーンティーの習慣も読んでいて非常に楽しくなってきました。一日のうちで1回はかならずアフタヌーンティー(スコーン付きで)のような時間を持った方が、時間に追われて終業時間まで目を血走らせて働くよりよっぽど人間的ですよね。読んでいるだけでもゆったりとした気分になってくる本です。

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February 15, 2005

オーシャンズ11

オーシャンズ11 特別版
ジョージ・クルーニー

ワーナー・ホーム・ビデオ 2004-12-03
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金庫破りのオーシャン(演じるのはジョージ・クルーニー)は出所後、元彼女(演じるのはジュリア・ロバーツ)を取り戻すためラスベガスの金庫襲撃を計画、相棒(演じるのはブラッド・ピット)と共に仲間を集める。果たして計画はうまくいくのか?

犯罪者の主人公を嫌ってラスベガスの事業家とつきあう元彼女。彼女を取り戻し、事業家に一泡吹かせるため計画を練るオーシャンと仲間たち。ところが仲間の1人(最年少)が先走ったおかげで計画は狂うは、仲間の1人が怪我をしてしまうは、おまけに事業家に計画を感づかれてオーシャンが捕まるは...。最後まで計画がうまくいくのかどうかはらはらさせられます。敵役の事業家(演じるのはアンディ・ガルシア)も憎々しくてうまいですね~。犯罪映画ではあるんですが、暴力シーンはほとんどなく、豪華キャストとユーモアたっぷりの華麗なる盗みのテクニックを楽しめる映画です。元彼女が添え物っぽい扱いだったのがちょっと残念だったかな。

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February 10, 2005

エスパイ

エスパイ
小松 左京

角川春樹事務所 1998-03
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超能力者からなる国際的諜報組織「エスパイ」。エスパイの一員である田村良夫はソ連首相暗殺を阻止すると言う使命を持って動き始めるが、敵の組織もまた超能力者の集団だった...。

小松左京氏による超能力+アクション(+お色気)小説です。エスパー+スパイで「エスパイ」と大変分かりやすいタイトルで、主人公はのっけから生命を狙われます(主人公が生き延びるために必死の努力をしているときに、周りからは飛行機恐怖症くらいにしか思われないギャップが笑えます)。ヒロインとの恋あり、ソ連首相暗殺を阻止するための決死の活躍あり、そして主人公の活躍の場は宇宙にまで広がった末に敵の組織のリーダーの意外な正体を知るのです。主人公もヒロインも敵との戦いの中で新しい能力を身につけるわけですが、ヒロインには一日も早く新しい能力をコントロールできるようになっていただきたい(笑)。眉間に皺を寄せて読みたくなる「日本沈没」や「復活の日」と違って、肩がこらずに楽しめる作品です。

*飛行機に乗っているときに隣の席の人が脂汗を流しているとしたら、その人はもしかしたら飛行機に仕掛けられた爆弾を解体するのに必死なのかも...(笑)。

*この作品、映画化もされています。原作と違って主人公(演じるのは藤岡弘氏)が「愛」を連発するのにはちょっと引きますが、ヒロインのナイスバディを楽しめる作品です。超能力の描写は「がんばりましょう」...かな。

エスパイ
藤岡弘
東宝 2004-09-25


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February 07, 2005

俺たちに明日はない

俺たちに明日はない
ウォーレン・ベイティ フェイ・ダナウェイ ジーン・ハックマン エステル・パーソンズ

ワーナー・ホーム・ビデオ 2000-04-21
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1930年代の大恐慌にあえぐアメリカ。ボニーとクライドの二人は銀行強盗を重ねて悪名高い存在となるが、二人の行く手に待つものは...。

明日が無いから明日のために働くわけが無い。明日が無いから今のために刹那的な犯罪を繰り返す。銀行強盗を重ね、人を殺しながら生き続ける二人(ある州で銀行強盗を働いても別の州に入ってしまえば捕まらないというのはこの映画で初めて知りました。州ごとに法律が違うんですね~)。銀行ばかりを襲い、いつしかヒーロー的存在となりますが行く手に待つものは決まっていました。途中から仲間に加わるが無残な最期を遂げるクライドの兄。家族とランチを楽しむが、一生逃げ回るしかないんだとつぶやいて去っていくボニーの母。二人にあこがれて仲間に加わるが、将来を案じた父親によって結果的には二人を売ることになった少年。そして最期に...分かってはいても、衝撃的なラスト「死のダンス」です。

*クライドの兄の奥さん役(エステル・パーソンズ)がうまいです。オバサンのずうずうしさといやらしさが見事に出てます(笑)。

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February 06, 2005

海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年

塩野七生ルネサンス著作集〈4〉― 海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年〈上〉
塩野 七生

新潮社 2001-08
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塩野七生ルネサンス著作集〈5〉― 海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年〈下〉
塩野 七生
新潮社 2001-08


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この作品は、海洋国家ヴェネツィアのはじまりからナポレオンによって独立国家としての形が終わるまでの約1000年にわたる歴史を丹念に描いたものです。

まず国家としてより前に人間が住める土地としての建設が始まり(確かどこかに「ビーバーの国」とかいう言い回しがあったと思いますが、本当にビーバーとして働かないと住める土地にはならなかったようです)、次第に力を付けていくにつれて地中海の覇権をジェノヴァと争い、キリスト教が大きな力を持った中世でも平気で異教徒と交易し、時には貿易の利権を守るためキリスト教国の一員としてオスマントルコと争い、...。非常に態度が現実的(利権を守るのが最優先事項)です。ヴェネツィアの市民は若い頃から商人として経験を積み、老練な商人が外交官になったり海戦の指揮官になったりした(商人であれば海賊やライバル対策として戦闘経験はたいていあったようです)のが影響しているのでしょう。読んでいて面白かったのが地中海のライバル、ジェノヴァとの対比です。ジェノヴァはどちらかというと個人個人の能力が非常に高く、個人で勝負するところがあったが、ヴェネツィアは逆に組織力でジェノヴァに対抗していたようです。結果的にはヴェネツィアの隆盛が長く続くわけですが、歴史の中では個人よりは組織としての力を充実させた方が長続きするのだろうかと考えさせられます。ちょっと長いですが、ヨーロッパの歴史に興味のある方にはお勧めです。

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January 29, 2005

アメリカン・バレエ・シアターの世界

BALLET アメリカン・バレエ・シアターの世界
アレッサンドラ・フェリ フレデリック・ワイズマン フリオ・ボッカ

角川大映映画/ジェネオン エンタテインメント 2003-07-25
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この作品は、アメリカン・バレエ・シアターのダンサーたちがワールドツアーに向けてレッスンを積む姿を追ったドキュメンタリーです。普通に服を着ていればそれなりの兄ちゃん姉ちゃんにしか見えないんですが、稽古着を着てレッスンを始めると体の筋肉質なことと柔らかさに驚かされます。振り付け指導のコーチのアドバイスを聞きながら自分なりのイメージを体で表現すべく稽古を続けるダンサーたち(やはり彼らも自分の肉体を表現手段とするアーティストなんだなと実感させられます)。そんな彼らもワールドツアーに出て夜には町に繰り出して大騒ぎする兄ちゃん姉ちゃんに戻るところが可笑しいです。実際にツアーで踊っているシーンは少ないのですが、バレエ団の舞台裏に興味のある方にはお勧めです。

*ダンサーたちの稽古のシーンも迫力ですが、それにも増して迫力があるのが裏方のおばちゃんです。自分たちの公演の後に別のバレエ団が同じ演目を踊ると知って猛烈な抗議をしてましたが、バレエ団の運営を(多分)一手に預かるとなるとあれだけの迫力がないとやってられないのかもしれません。

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January 21, 2005

鬼平犯科帳



江戸時代後期。火付盗賊改方の長官となった長谷川平蔵は次々に盗賊たちを捕らえ、盗賊たちから「鬼平(鬼の平蔵)」と恐れられるようになっていく...。

江戸時代後期(時代で言うと松平定信が老中を勤めていた頃でしょうか)。江戸にはびこる火付け・盗賊に手を焼いた幕府が火付盗賊改方の長官に任命したのが長谷川平蔵です。この火付盗賊改方という役職、江戸時代後期には珍しく切り捨て御免で、実際に手向かう盗賊たちを容赦なく切り捨てるシーンも出てきます。ただし激務の割には見返りが少なく、敬遠されがちな役職だったようです。その火付盗賊改方長官となった長谷川平蔵も今でこそ大身の旗本ですが、若い頃は継母からうとまれて無頼の限りを尽くした人でした。皮肉にも若い頃の放蕩が人を見る目を育て、盗賊たちに対してさえただ取り締まる対象としてではなく人間として見るようになったようです(平蔵の人柄に打たれて密偵となる盗賊たちも現れます)。平蔵の若い頃の素行の悪さを取り上げて火付盗賊改方長官への就任を疑問視する声に対して、「悪を知らぬものが悪を取り締まれるかよ」と笑い飛ばすところは印象的です。

主人公である平蔵自身もそうですが、平蔵の人柄に打たれて密偵となる元盗賊たちもまた魅力的です。盗賊からすればもともとは自分たちの仲間だったのが仲間を売る立場になるわけですから「いぬ」と蔑まれ、密偵であることがばれればまず確実に命はありません(凄惨なリンチの後殺されるでしょう)。それが分かっていながらあえて密偵の道を選び、平蔵のためにそれこそ命がけで働く姿を見ていると、どんな仕事でも命を賭けてまでやれるかどうかは人間にかかってくるのかと考え込まされました。この作品は江戸時代の犯罪ものと言うよりは、平蔵を取り巻く人々をめぐる人情ものと見たほうが楽しめると思います(チャンバラを期待していると裏切られます)。

*この作品、好きなエピソードがいろいろあって選ぶのに困るくらいなのですが、盗賊の三箇条を守り抜く昔かたぎの盗賊たちを描いた「一本眉」や、平蔵と殺し屋との死闘を描く「暗剣白梅香」あたりは何度も読み返しています。

*この作品、TVや映画でも何度か映像化されています。印象に残っているのはTV版のエンディングで使われたジプシー・キングスの「インスピレイション」。時代劇にフラメンコ?と思ったんですが、聞いて見ると江戸の四季の映像に音楽がぴったり合っていて驚きました。「インスピレイション」が収録されているCDは多いですが、ジプシー・キングスの他の曲も楽しめると言う点では「ボラーレ!」がお勧めです。

ボラーレ!― ベスト・オブ・ジプシー・キングス
ジプシー・キングス

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January 07, 2005

アフターマン

アフターマン 人類滅亡後の地球を支配する動物世界
ドゥーガル・ディクソン 今泉 吉典

ダイヤモンド社
2004-07-09
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フューチャー・イズ・ワイルド」の作者が書いた、人類滅亡から5000万年後の世界です(時間的に言うとこちらの本のほうが1990年に出版されてますから、「フューチャー・イズ・ワイルド」はこの作品の続編みたいなものでしょうか)。人類と言う地球の環境に多大な影響を与えていた存在があっけなく滅び去ってから5000万年後。地球の生物は変わりゆく地球の環境に適応してその姿を変えていきます。草食動物として世界中にはびこるラバック(ウサギの子孫)。イラストを見ると顔だけは祖先のウサギにそっくりなのが笑えます(胴体は馬やカモシカに似てます)。繁殖力が強いために草食動物として広まったと言う考え方なんでしょうか。そして、そのラバックを追う捕食動物のプレデター・ラット(ネズミの子孫)。こちらは顔にわずかに祖先のネズミの面影が残ってますが、姿は細身のオオカミという感じですね。姿はかなり変わってますが、ウサギの子孫とネズミの子孫が追いかけっこを演じる草原を想像して見ると楽しいです。この作品では主に陸生の哺乳類が環境の変化に対応してどのように姿を変えていくかに的を絞っているようですので哺乳類以外の生物や海の生物についてはほとんど説明が出てきませんが、今いる動物たちがどのように姿を変えていくかを想像するだけで楽しめる本です。

*表紙に出てくる動物の祖先がなんなのかについては、本を読んでのお楽しみ。

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December 20, 2004

アンドロメダ病原体

アンドロメダ病原体
マイクル・クライトン

早川書房
1976-10
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一つの町が赤ん坊と老人二人を残して全滅!原因は町の近くに落下した人工衛星に付着していた未知の病原体によるものと思われた。なぜ二人だけが生き残れたのか?病原体を防ぐ手立てはあるのか?答えを求め、科学者たちは必死の研究を始める...

ジュラシック・パーク」や「ウエストワールド」で知られるマイクル・クライトンのデビュー作です。未知の病原体が人工衛星にくっついて地球に落ちてきた...という設定もワクワクしますが、病原体の拡散を防ぐために何重にも隔離された施設の中で必死の研究を続ける研究者たち(もちろん生き残った赤ん坊と老人も同じ施設にさらに厳重に隔離されたまま収容されています。全滅してしまった町は...町ごと全て焼却してしまったんでしょうね、多分)。生存者の世話をするときは防護服を着るんですが、あの服が何かの拍子に破けたりしたらさぞパニックになったことでしょう。時間に追われ、自分たちも感染の恐怖にさらされながら研究を続けるシーンがスリリングです。次第に謎が明らかになっていくにつれて安心もするんですが尻すぼみ気味になってくるところがちょっと残念です。

*この作品を原作にした映画「アンドロメダ・・・」もお勧めです。
アンドロメダ・・・
アーサー・ヒル

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December 03, 2004

エリザベート―ハプスブルク家最後の皇女

エリザベート〈上〉―ハプスブルク家最後の皇女
塚本 哲也

文芸春秋
2003-06
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エリザベート〈下〉―ハプスブルク家最後の皇女
エリザベート〈下〉―ハプスブルク家最後の皇女


エリザベートと言うとハプスブルグ家の最後の皇妃エリザベート(愛称シシィ。美女として有名だったそうですが暗殺されてしまいます)が有名ですが、この作品で取り上げられるのはそのエリザベート皇妃の孫で皇太子ルドルフ(皇太子であるうちに男爵令嬢と自殺を遂げたらしいですね)の娘にあたる皇女エリザベートです。皇位は他の人が継ぐことになったので(エリザベートのおじに当たる人だったと思いますが、確か夫婦ともどもサラエボで暗殺されて、それが第一次世界大戦の引き金になったと記憶しています)女帝とはならなかったのですが、エリザベートもまた波乱に満ちた人生を送った人でした。皇女時代に軍人と恋に落ち、周囲の反対を押し切って皇女の身分を捨ててまで結婚。子供も生まれて幸せな日々が続きますが、やがてその生活も破綻してしまいます。そして第一次世界大戦で実家のハプスブルグ家も崩壊。その後別の男性と知り合って政治活動に身を投じていましたがナチスによって夫は投獄。奇跡的に夫を取り戻すことが出来たと思ったら今度はソ連...。まるで二つの世界大戦の影響をもろに受けたオーストリアとチェコスロヴァキアを体現したような一生です。オーストリアは民族運動の中で崩壊していくのですが、もしこれがイギリスなどのようにゆるやかに立憲君主制へと移行して行ったらオーストリアもチェコスロヴァキアもここまで歴史の波をかぶらずにすんだかもしれません。皇妃エリザベートやハプスブルグ家に興味のある方には面白く読めると思います。

*皇妃エリザベートの興味のある方はこちらもどうぞ。
皇妃エリザベートの生涯
皇妃エリザベートの生涯

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November 17, 2004

アブサン物語

アブサン物語
村松 友視

河出書房新社
1995-12
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*文庫版「アブサン物語」も出ています。

作者夫婦の家にやってきた子猫。その子猫は「アブサン」と名づけられ、21歳で天寿を全うするまで作者夫婦と共に暮らし続けることになった...

作者夫婦と飼い猫アブサンとの、長い間にわたる関わりを描いた作品です。「アブサン」と言う名の由来は別にこの猫がアブサン好きなわけではなくて、まるでアブサンを飲みすぎたかのように嗄れ声で鳴き続けていたことからくるらしいです。猫を飼っている人なら恐らく思い当たるであろう数々のエピソード。作者が仕事中(つまり、原稿を書いているとき)に原稿用紙の上に近くにいるアブサンの尻尾が何度払っても垂れ下がってくるので、しかたなく片手で尻尾をつまみあげながら原稿を書いたというくだりには笑ってしまいました。そして、どんな生き物にも必ずやって来る老い。人間からみればあっという間に成長してあっという間に老いていくアブサンと共に最期の日々を作者夫婦は過ごします。どんな生き物でも別れを告げる日は必ず来るのだ、こんな風に看取られて死んでいけるのは幸せなことなのだと思っても...切ないものです。猫を飼っている方には最後のほうだけでも読むことをお勧めします。

*同じように老いた飼い犬と過ごした最期の日々をつづった作品に谷口ジロー氏のコミック「犬を飼う」があります。こちらもお勧めです。

犬を飼う
犬を飼う

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November 14, 2004

イグ・ノーベル賞

イグ・ノーベル賞 大真面目で奇妙キテレツな研究に拍手!
マーク・エイブラハムズ 福嶋 俊造

阪急コミュニケーションズ
2004-03-19
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イグ・ノーベル賞とは、「真似することが出来ない/すべきでない」業績を上げた人を対象に、毎年授与される賞のことです。映画だとゴールデン・ラズベリー賞が有名ですが(受賞しても名誉なことではないですが)、こちらは賞を授与するほうも受賞するほうもしごく大まじめ。科学に対して真摯な態度で向き合っている人に与えられる賞なのです(どう向き合っているかと言う問題はありますが)。なお、授賞式にはノーベル賞を受賞したそうそうたる顔ぶれも参加します(笑)。

この本はイグ・ノーベル賞受賞者の挙げた素晴らしい業績の数々を紹介した本です。読んでいて特に感銘を受けたのは(笑)、紅茶の入れ方を6ページにわたる規格として定めた英国規格協会(略してBSI。確かBSIってイギリスの工業規格だったような...)、ルアク(ジャワ・ジャコウネコ)の排出物から集めたコーヒー豆を使って世界一高価なルアク・コーヒー(コピ・ルアクと言うらしいです)を製造しているジョン・マルチネス氏の業績でした。特にルアク・コーヒーの製法に大きな役割を果たしているルアクのグルメぶりには声もありません。日夜真摯な態度で真理と向き合っている科学者たちの素晴らしい業績をぜひ読んでみてください。

*イグ・ノーベル賞の概要や受賞の模様については、ユーモア科学研究ジャーナルのサイトで見ることが出来ます。

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November 12, 2004

喪われた都市の記録

喪われた都市の記録 (上)
光瀬 龍

角川春樹事務所
1998-11
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喪われた都市の記録 (下)
喪われた都市の記録 (下)


人類が太陽系の惑星に植民都市を建設しつつある近未来。火星で、金星で、木星で「ある物体」が発見され、惑星を離れて飛び去っていった。植民都市は甚大な損害をこうむった。そして人々に届く「惑星アイララ」からの声。はるか昔に滅んだと言う「惑星アイララ」は、なぜ今その活動を始めたのか?

遠い昔に滅亡の危機に瀕し、いつか再開することを願ってちりじりになっていった人々。しかしかれらのやり方は少し変わっていました。他の星に移住してアイララを再興するのではなく、自らアイララを粉々にし、アイララの土の中に身を隠して眠りについたのです。いつか人々がアイララの土と共に再結集すればアイララそのものがよみがえります。しかしそれは太陽系に植民を進めていた人類にとっては大きな脅威となるものでした(実際にはアイララの人々は地球にもたどり着いていたのですが)。どんな文明にもいつかは必ず訪れる「滅び」。それがどのような形をとるのかは分かりませんが、文明の終焉のあとに吹くのはいつも滅びの風です。時の流れの無常さを感じさせる作品です。

*植民都市の名前「東キャナル市」、「ヴィーナス・クリーク」、「浮遊都市(プランクトン・シティ)」がなんとも魅力的です。宇宙戦艦ヤマトに出てくる「浮遊大陸」はこの辺が元ネタかな?

*星の海に乗り出していった人々を描いた星野之宣氏のコミック「2001夜物語」もお勧めです。

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November 09, 2004

ウエストワールド

ウエストワールド
ユル・ブリンナー

ワーナー・ホーム・ビデオ
2003-10-03
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人間そっくりのロボットを使い、古代ローマの貴族、中世ヨーロッパの騎士、そして西部開拓時代のガンマンになりきって楽しめるテーマパーク「デロス」。主人公は友人と共に休暇を西部開拓時代(ウエストワールド)で楽しむべくデロスにやってくる。早速無法者として振る舞い、牢屋から脱獄して楽しむが、そこにロボットの反乱が! 友人はロボットガンマンに射殺され、主人公は1人デロスを逃げ惑うことになる...

ユル・ブリンナーがロボットガンマンを怪演する「ウエストワールド」です。主人公は友人と共にデロスでまともとは思えない娯楽を楽しむわけですが(ロボットとはいえ人間そっくりのガンマンや保安官を撃ち殺して喜ぶんですから、あまり健全な娯楽とは思えません)、主人公の友人が砂漠でガラガラヘビ(これもロボット!)にかまれたのが予兆でした。デロスに朝が来て、ロボットに電源が入るとロボットは次々に人間たちを殺し始めます(中世ヨーロッパの騎士になりきって女王とアバンチュールを楽しむはずだったおじさんが気の毒)。主人公も友人を撃ち殺されて逃げ惑います。それをどこまでもどこまでも(そして、どこまでも)追い続けるユル・ブリンナー。このあたり、ちょっと「ターミネーター」を連想させます。主人公は辛くもロボットガンマンを撃退して一息つくのですが、生き残れたのは彼だけでした。どれだけ優れた技術であろうと、自分で完全にコントロールできない限りいずれは破綻が来る...という、科学技術への警鐘のようにも読めます。

*ところでこの作品のシチュエーション、どこかで見たことがあると思ったら、この作品の監督はマイケル・クライトン(「ジュラシック・パーク」の原作者)でした。

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November 03, 2004

アラビアンナイトを楽しむために

アラビアンナイトを楽しむために
阿刀田 高

新潮社
1986-12
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アラビアンナイト(千夜一夜物語)と言うとシンドバッドの冒険とかアラジンと魔法のランプとか、アリババと40人の盗賊とかが有名ですが、そのアラビアンナイトを阿刀田高氏流に味付けした解説本です。そもそもの発端からしてかなりシニカルで、妃に浮気をされたおかげで女性不信となった王様が夜毎に処女を夜伽に召しては翌朝殺すことを繰り返していたんですが、大臣の娘が王の行いを止めさせるために寝所に赴き、奇妙で面白い話を千一夜続けてついに王を改心させた...のだそうです。寝所で夜明けまで話すくらいですから当然寝物語でしょうし、そのせいもあってかエロチックな話が多いようです。読んでいてちょっと面白かったのはアラブの美女の形容です。いくつも言葉を連ねてものすごい美女だとたたえているらしいことまでは分かるんですが、その形容の仕方が日本式とは全く違います(正直に言うと、読んでいてもどうしてこれで美女と言えるのかまったくピンとこなかった)。もちろんエロチックな話だけではなくて人生を考えさせられるようなエピソードもあります。千夜一夜物語に興味のある方にはお勧めです。

*解説本ではなくて原点を読みたいと言う方にはバートン版千夜一夜物語がお勧めです。こちらになるとエロチック度がパワーアップかも(笑)。

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October 14, 2004

王家の風日