April 22, 2005

夜来たる

*「夜来たる」は同名の短編集「夜来たる」に収録されています。
夜来たる
アイザック アシモフ 美濃 透

早川書房 1986-11
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六つの太陽に囲まれた惑星ラガッシュ。この星は2050年ごとにやってくる日食を迎えようとしていた。日食のとき、文明に何が起こるのか?

惑星ラガッシュにかつて栄えた文明がなぜか「周期的に」滅びていたという事実(しかも、文明の中心部が火によって焼き尽くされていました)。そして2050年ごとにやってくると言う日食との不気味な暗合。天文学者、カルト教信者、そして新聞記者たちはそれぞれの立場から恐怖をもって日食のときを迎えます。そして迎えた日食。生まれてからずっと真の暗闇を体験したことがない人たちだったらきっとこんな風に反応するんでしょうね(皆既日食のときの映像を見たことがありますが、太陽が全て隠されたときに牛が不安そうに鳴き出すシーンを思い出しました)。最初にこの作品を読んだのはずいぶん前ですが、この作品のアイデアには思わずうなった覚えがあります。考え付きそうでなかなか考え付かないでしょう。

*この短編集に収録されている「緑の斑点」もお勧めです。

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April 18, 2005

ヤング・シャーロック ピラミッドの謎

ヤング・シャーロック ピラミッドの謎
ニコラス・ロウ バリー・レビンソン アラン・コックス クリス・コロンバス

パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン 2005-03-25
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19世紀のロンドン。ワトソン少年は名門の寄宿校に入学し、ホームズと知り合いになる。折から奇怪な殺人事件が次々と発生し...。

名探偵シャーロック・ホームズとワトソン医師のコンビは世界的に有名ですが、その二人の少年時代はどうだったのか?を描いたのがこの作品です。次々に起こる殺人事件。被害者は全て奇怪な幻覚にとらわれていたようでした。ホームズはワトソン、そしてガールフレンド(!)のエリザベスと共に事件の謎に挑みます。被害者たちが幻覚にとらわれるところでステンドグラスから騎士が飛び出してきたり、彫像の(多分)ガーゴイルが動き出して被害者に飛びかかって来たりするシーンはつい見入ってしまいます。ホームズとワトソンが自転車付きグライダーに乗って空を飛ぶところもなんとなくE.T.のシーンを連想させて楽しいです。ワトソン少年はお菓子大好きで(生クリームをくっつけられる悪夢のシーンが笑えます)、ホームズ少年はこの頃から天才的な推理力を持ってますがちょっと生意気というように、ホームズとワトソンの少年時代はこんな風だったのかもしれないと想像すると面白いです。そうそう、ラストはホームズファンにはお楽しみです。

*ホームズのトレードマークである帽子とパイプにまつわるエピソードもこの作品で出てきます。パイプはやはりホームズに欠かせませんね。

*本家シャーロック・ホームズのイメージに最も近いのではないかと思うのがジェレミー・ブレット氏演じるイギリスのTVシリーズのホームズですが、こちらもDVDが出ています。

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April 17, 2005

妖説太閤記

妖説太閤記〈上〉
山田 風太郎

講談社 2003-11
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妖説太閤記〈下〉
山田 風太郎

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戦国時代の日本。木下籐吉郎(後の豊臣秀吉)は織田信長の家臣となり、出世街道を驀進する。本能寺の変の後は織田信長の後継者として天下を掌握。その原動力となったものは...。

織田信長の妹・お市の方に惹かれ、信長の家臣となる主人公。ひたすら出世街道を驀進しますが、その原動力はお市の方への思いでした。「思い」というほど生易しいものではなく、妄執に近かったようですが。もちろん出世の方も怠りなく、将来自分の大敵になりそうな徳川家康を死ぬ危険の高い戦に誘ってどさくさ紛れに殺そうと図ったり、家康の息子の謀反の噂をまいて家康が信長にそむくように仕組んだりと権謀術数の限りを尽くしています(それでも家康は秀吉の狙いを全て外して、死ぬことも信長にそむくこともなかったのですから家康もしたたかですな~)。そして、信長からお市の方が柴田勝家に嫁ぐと知らされたとき、秀吉は一世一代の大勝負を決意します。秀吉の前では明智光秀など自分の思うままに動かせる駒でしかなかったのでしょう。ところが、大勝負に勝ち、天下を手に入れ、お市の方は手に入れられなくてもその娘(お茶々)を手に入れたときに秀吉の中で何かが狂ってきたのではないかと思うのです。望むものを手に入れ、自分の周囲は全て2つに分けて争わせた上で均衡を保ってきたのが、その手が使えなくなってしまったらどうなるのか。晩年の秀吉はまるで人間が入れ替わってしまったかのようです。山田風太郎氏の作品としては驚愕淫靡陰惨な忍術はほとんど出てきませんが、実際の秀吉はこんな人だったのではないかと思わせる迫力のある作品です。

*秀吉の手に入れた女性はほとんど全て自分より身分が上の美少女ばかり(妻のおねにしても結婚した当初は秀吉より身分が上の少女でした)。ロリコン趣味だったんでしょうかね...。

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February 27, 2005

地球幼年期の終わり

地球幼年期の終わり
アーサー・C・クラーク

東京創元社 1969-04
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大国によるにらみ合いと軍備競争が続く近未来の地球。その地球にある日突然、異星人の大船団が現れた。異星人はたちまち地球を掌握し、地球は異星人の管理と指導の下に発展を続けるが...。

異星人の指導の下に冷戦も解消し、人類は発展の道を歩むと言うよく考えてみるとかなり情けない状態で物語は続きます(もっともアメリカ人あたりは優れた存在の管理と指導の下に人類が発展するなんていうシチュエーションを好みそうですが。自分たちが他の国に駐留して管理と指導をやってるようだし)。人類を指導しながら、自分たちは決して姿を見せようとしない異星人たち(後になってその理由が分かるわけですが)。そして、異星人たちもまたより高度な存在からの指示によって人類の発展を促しに来たに過ぎなかった事実が明らかになります。なぜそこまでして人類の発展を促すのか?資源が欲しいだけなら人類を指導する必要はないはずだし、労働力ならロボットで十分なはずです。物語が終盤に近付くにつれて異星人たちの真の目的も、この作品のタイトルの意味も分かってきます。ただ、人類は本当に幼年期を終えて次のステップへ進むだけの資格のある種族なのだろうかと読み終えてからしばらく考え込んでしまいましたが...。

*ところでこの作品、以前は「地球」がなくて「幼年期の終わり」というタイトルだったような。

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February 13, 2005

妖星ゴラス

妖星ゴラス
池部良 本多猪四郎 久保明 水野久美

東宝 2004-02-27
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地球の数千倍の質量をもつ妖星・ゴラスが地球に接近しつつあることが判明。このままではゴラスの引力によって地球が破壊される。カタストロフを阻止するために人類は決死の努力を開始した...。果たして人類は破滅を免れることが出来るのか?

ゴラスの爆破は不可能と分かったとき、「地球が動くしかない」。人類は一丸となって南極にロケット噴射基地を作り、地球を軌道から動かしてゴラスから逃れようとします。つまり、地球ごとロケットにして逃げ出そうと言うアイデアなんですが、これだけでもワクワクしてきます。着々と建設される基地。ゴラスが近付いてきたことによって起きる天変地異(人類は地下にもぐって避難してたんでしょうか?)。この天変地異はついでに南極に眠っていた巨大なセイウチ怪獣・マグマ(このマグマ、確か「DVD ウルトラQ VOL.7」にも出演していたような...)まで呼び覚ましてしまうのでした。いかにも付け足しという雰囲気が見え見えのマグマをめでたく倒した後、大幅に遅れたスケジュールを取り戻すべく突貫工事で基地の建設はさらに進みます。そしてゴラスが近付く運命の日...。人類が固唾をのんで見守る中、地球はゴラスの巨大な引力を振り切ることに遂に成功したのでした。ラストの「さあ、今度は北極に基地を作って地球を元の軌道に戻さねば!」(うろ覚えなのでせりふはかなり違ってると思います)のなんとも明るいこと。「科学力の勝利」を無条件に信じることが出来た時代の、観ているだけで楽しくなってくる空想科学映画です。

*同じ頃作られたスペクタルパニック映画に「世界大戦争」があるんですが、ムードも結末もゴラスとは正反対ですね。あの作品はやりきれなかった...。

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November 08, 2004

吉原御免状

吉原御免状
隆 慶一郎

新潮社
1989-09
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江戸時代初期。宮本武蔵に育てられた剣士・松永誠一郎は、師の遺言に従い江戸・吉原に赴く。折りしも吉原では徳川家康が与えたと言われる「神君御免状」をめぐり、裏柳生の忍びとの暗闘が繰り返されていた。誠一郎はその争奪戦の真っ只中に巻き込まれていく...

吉原というと花魁が真っ先に思い浮かびます。そして「苦界」と言う言葉もあるとおり、男には極楽、女には地獄と言うイメージも...この作品はそんなイメージに疑問を呈し、むしろ吉原こそがまつろわぬ民として幕府から迫害を受けていた人々にとっての砦だったのではないかと、吉原に新しいイメージを吹き込んだ作品です。当時の吉原の風俗もふんだんに盛り込まれて、そこを読むだけでも面白いです。特に客と花魁が初めて一夜を共に過ごすときのしきたりですが、もう儀式と言って良いほど詳細に書き込まれています(こんなにしきたりが盛りだくさんでは、客もひと苦労です)。もちろん吉原の風俗だけでなく、主人公と裏柳生との死闘も盛りだくさんに描かれています。まるでビジネス書みたいな歴史小説に飽き飽きしている方には特にお勧めです。

*この作品、同じ作者の「影武者徳川家康」や「一夢庵風流記」と背景でリンクしています。あ、あの人が出てると思いながら読むのも楽しいです。

*この作品の続編が「かくれさと苦界行」です。こちらでは、主人公も敵役の柳生義仙も共に大きな転機を迎えることになります。そのために払った犠牲もまた大きなものでした。

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September 10, 2004

用心棒

用心棒

発売日 2002/12/21
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やくざ同士の抗争ですっかり荒れ果ててしまった宿場町。そこにやってきた浪人者(演ずるのは三船敏郎)は桑畑三十郎と名乗り、双方のやくざの親分に自分を売り込みつつ、たくみに争わせて相打ちを図る。しかし農民親子を助けたことから三十郎のもくろみがばれて...

最初の犬が出てくるシーン、三十郎が最初にやくざに自分を売り込むシーンから引き込まれてしまいます。既に法の通用しない無法の町で、三十郎が何をたくらんでどう動くのか...殺陣も凄いし(三船敏郎の剣の動き、速いですね~)、「用心棒といっても雇ったほうが用心しなけりゃならねえ用心棒もある」ってせりふも楽しいです。ストーリーだけ見れば殺伐としているんですがユーモアもあり、最後まで楽しめます。めしやのおやじ(演じるのは東野英治郎)もうまいです。

*故天本英世氏も出演していたとは知りませんでした。こんなところで若かりし頃の死神博士にお会いできるとは。

*この映画の続編が「椿三十郎」です。こちらもお勧めです。

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September 03, 2004

妖星伝

完本妖星伝 (1)
半村 良

発売日 1998/09
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完本妖星伝 (2)
半村 良
完本妖星伝 (3終巻)
半村 良

邪教とされ、厳しい弾圧を受けながらも日本の歴史を影から操ってきた鬼道衆。彼らは自分たちを黄金城へ導く指導者「外道皇帝」を長い年月探し続けていた。時は江戸中期。飢饉や一揆の続く中、折りしも外道皇帝に似た存在が出現し...

外国のSFとは一味違う、仏教世界を背景とした日本のSFです。全編エロとバイオレンスに満ち溢れているのにもショックを受けましたが(笑)、命の満ち溢れているさまを異常だと見、咲き乱れる花々を命の喰らい合いとする見方にも衝撃を受けました。ただ残念なのが、長い空白を経て発表された最後の部分です。外道皇帝に打ち捨てられた妖星の行く末を描いたのですが、この部分はないほうがよかったような気がします。

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